異空間へ

乳がんと子宮がんの検診へ。

家のちかくにある、女医、看護婦お二人の、こぢんまりとした医院。

レトロというのだろうか、失礼ながら、けっこう、ぼろい。

待合室には誰もいない。人が来る気配もない。

いつのだろうという古い雑誌をパラパラめくっていると「どーぞぉ」という高い声が響く。手書きの「診察室」と書かれた茶色い引き戸をあけると、化粧ばっちりの、おばあさん現る。一瞬、扉をしめて、そのまま帰ろうかと、迷う。

 

 先生の問診を受ける。「はい、上を全部、脱いでちょうだい」

おっぱいをだして、先生がもみもみ、触診。

それから、ワンピースの下にはいていたパンツを脱ぎ、壊れそうな台の上にのり、御開帳。広々とした空間でする。どきどき。天井を見ながら、ここはどこだ、という気持ちになる。診察と関係あるのかないのか「あなたは現代に毒されているわよ」「いまの蚊はこわいわよ」「ちょっと計画性がないわね」というお叱りを受けつつ。この病院、次に、目の前を通ったら、消えている、としてもおかしくないくらい、異空間。

帰り、外の扉のわきに咲いている、赤いハイビスカスと胡蝶蘭を見て、なんだかほっとする。